はじめに
君たち
漫画から漫画の勉強するのは
やめなさい
一流の映画をみろ
一流の音楽を聞け
一流の芝居を見ろ
一流の本を読め
そして、それから
自分の世界を作れ
トキワ荘に住まう若き教え子たちに手塚治虫は説いた。端的に言えば「テメーの畑だけで学びを完結させるな」といったところか。財団での本格的なTale執筆を始め約5年目にして出会った身ではあるが、私自身この言葉には心の底から共感している。
財団での活動を通じて何度か出会う新人著者の中にも「教書以外の文学を知らない」「映画は観ない」「アニメを知らない」「漫画を読まない」「自分の金で本を買ったことがない」といった方が例年多数見受けられ、ならば如何様に文章創作に挑むかといえば大抵財団の創作物から学ぶという手段に走っている。状況を知り得る手段は無いにせよ当時の手塚治虫も同じ心境であの言葉を吐き捨てたのであろうと少なからず想起してしまった。その所感はもう少し後に改めて述べさせていただこう。
本書を手に取ってくださった各位に認知していただきたいまず重点の一つ目はこれである。
「財団でTale書くなら財団以外を学べ!!!」
最悪これを憶えてくれるのであれば今すぐ本書を破り捨てていただいても構わない。言葉の意味するところを更に知りたいのであれば本項読了後に改めてページをめくっていただければ幸いだ。財団でTaleを書くという一目的のために多額の金銭を払ってまでその一歩を踏み出してくれた貴方に対し、私v vetmanが最大限の責任を以て描写のイロハを解説する
一章: 動的な状況描写
1-1: これから学ぶもの
表紙でも腐るほどアピールしている通り、本書が取り扱うのはTaleの書き方全てではなく物語を読ませる文章の書き方である。
別にやろうと思えば出来なくもないが、Taleを一から書き上げる技術を頭から爪先までまとめるない理由の一つは文字数が嵩む点にある。限りなく字数が嵩む。その文字数を連載中のアレコレに割り当ててあげたいくらいに嵩むし、同人誌という媒体で情報を発信する以上金銭や文量などで余計なハードルを与える行為も避けたかった。
次に「物語の構築」を私個人から学ぶこと自体がリスキーであることも理由の一つだ。それこそ前のページに書き記した通り「財団以外から学べ」案件であるし、これについては他のサイトメンバーや著名な商業作家の各位がいくらでも著書にまとめているため、今更私が解説したところで恐らく似たり寄ったりの内容に落ち着くだけという見解の下本書の執筆に至った。
解説するのは書きたい物語を文字に起こすノウハウ、それも主人公と状況が映像的に動く類のものである。詩的文学や純文学といった静的描写を専門とする筈の方々には向かない内容ではあるが、一応知見の一つとして読んでいただく分には一切の害が無いと保証する。
1-2: 動的描写と「カメラ」について
キーワード:動的描写/カメラ
経験則に基づく独自のノウハウを解説するため、本書では私が一時的にそう名付けているだけの用語がいくつか登場する。私の知らないどこかで同じような解説書を記している方もきっとそういった独自用語の使用に走っている筈であるため、この先何か見知らぬ造語が仰々しく登場したとしても「この人はそう名付けているだけなんだな」という認識で学んでいただきたい。
ここでは「映像的な動きのある描写」をまとめて動的描写と呼称する。直感で理解してもらうならこの辺りが解りやすい。
[ここに自著の引用を3、4パターン羅列]
戦闘、日常の一動作、会話、静止状態の説明の順で並べたが、いずれもキャラクターや状況の動作を明確に、緻密に、極力フィルターに通すことなく起きたことをそのまま[加筆]
では映像的な動きのある描写を描く上で何が必要なのか。答えは単純明快だ。「映像」そのものである。映像そのものが存在するならその要点を参照して文章に起こすという一連の必殺コンボがまかり通る。
しかしこの場合何を以てして「描写に足りうる映像」とするのか。動的描写を描くためには撮り下ろした他人の一挙動が必要なのか。編集ソフトで組み立てたアニメーション作品が必要なのか。最終的にはどちらも必要なくなる。我々人類には脳内映像を組み立てる機能が備わっているからだ。
この脳内映像の要点を切り取り、実際に文字に起こして描写する上での切り取り方を「カメラ」と呼ぶ。
1-n: まとめ
動的描写: 映像のような動き、連続性を持つ描写
静的描写: 一つの状況に心理的フィルターを付与して再解釈した描写。
脳内映像: 文章化する前段階の映像イメージ。このまま文字に起こしてもまともな描写にはなり得ない
カメラ: 動的描写の際、脳内映像を文字に起こす上で使用する視点。
第二章: 脳内映像との向き合い方
2-1: カメラの基本機能
脳内映像を再編する専用のカメラは現実のそれと比較にならないほど自由だ。何せズームインアウトは愚か視点の移動がまでが自在であり、更には時間の流れまでコントロール可能なのだから当然だろう。
カメラの基本的な使い方について説く前に、まずは動的描写を執筆するにあたり最低限言語化しておくべき事柄についてまとめておこう。
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