御嶽に喰む: 0話 - 最果ての継承
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評価: 0+x
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午後5時。6月某日。2021年。東京都のとある人の居ないステーキハウスの一角。


スラックスとワイシャツで身を固めたオールバックの青年と、恐らくは米軍の放出品と思わしきミリタリージャケットを羽織った長髪の女の間には、鉄板の上で肉が焼かれる音のみ流れる未だ異様な空気が滞留している。

「ステーキハウスなんて久しぶりなものでしてね」
「嫌いか?」
「いや、別に嫌いというほどでは」

安いつくりの紙ナプキンを外し、ナイフとフォークを手にする。

「それで、俺へのご用件は何なんでしたっけ?」
「君をスカウトしたいと思っている」

男は肉に向けていたナイフを滑らせる。ステーキの肉汁のせいではない。男はその体勢のまま顔を目の前の女に向け、「冗談ですよね?」と小声で問いかける。女は背もたれに寄り掛かると、首を横に振る。

帰宅中に会って突然「君が国頭改クニガミカイか?話がしたい。」と自宅近辺で声を掛けられた女からまさかスカウトをされるという全くもって意味の分からない経験をしたのはおそらくこの男だけだろう。

「よりによってなんで俺なんですか?他にもうちの会社には優秀な人材がたくさんいますよ。腐っても通信事業ですから」
「君が必要な理由がある」
「差し支えなければ聞かせてもらっても?」

そういうと目の前の女はバッグから小型の装置のような物を取り出す。

「これに見覚えは?」

古びた、辛うじて機械と呼べるようなゼンマイや歯車の取り付けられた装置。基礎的ではあるものの、通信機器のような見た目をしている。

「いや、見たことはないと……」
「『褒めるくらいなら給与上げとけカス』という旨に聞き覚えは」

そこまで聞くと、男は。

「届いたんですか」

「君はこれをどこで手に入れた?」
「何分見つけたガラクタは直したくなるタチでしてね。古物店で目に付いた何かだったとは記憶しています」
「再現性は?」
「前の手順を思い出せば無理ではないかと」

日が落ち、店の灯りが明るくなると、男は女に向き直り、顔を見つめる。

「これ、一体何なんですか?」

女は少し考えるような仕草をした後、男にこう告げる。

「逆に、今の君の考えを聞かせて欲しい。これはなんだと思う?」

男は口の中に切り分けたステーキの一片を口に詰め、その後逆に問う。

「まずはお互い名乗りませんか?」
「アオと呼ばれることが多い。これで満足か?国頭改」

改と呼ばれた男は再度、ステーキを口の中に放る。自称アオはただ見つめる。

「この機械で俺の通信を聞いたんですか?」

装置に手を触れる傍ら、何の気無しの一言だった。ついに多少の動揺が叶ったか、アオは片方の眉を僅かに動かして即座に応答する。

「ああ。これと君のものが繋がってると見ていいだろうな」

再び装置を机に置き、目を合わせる。

アオからとってすれば、既に覚えのある視線だった。例えば、それは図書館の手。虎視眈々と機を伺いつつ、時には強かに、時には、
異常事例調査局

「通信機材ではある。ただ、素材の劣化具合から逆算した場合一つの結論に辿り着く」
「辿り着いたものは?」


「『その当時』にあっていいはずがない」


ただでさえ風通しの悪いステーキハウスの店内は静寂に包まれ、より

「前言撤回の必要はなさそうだ」
「つまりは」
「正式に君をうちの構成員として迎え入れたい」


「──超常に蛇の手に青大将、財団にGOCに日本政府にヴェール政策……」
「理解してもらえたか?」
「一応理解したつもりです」

グラスの氷は溶け、結露の水は机から零れるほどだ。

「ただ、君にやってもらうことはそこまで難しいことではない」
「要はこれを?」

装置を再度机の中央に置く。

「直すというわけだ」
「どれくらいを?」
「全国だ」
「全国?」

国頭改は日本列島の図を頭に思い描く。彼の知る範囲は特に鮮明に。

「何せこれは旧日本陸軍の異常専門集団の遺物。奴らが北は北海道、南は沖縄まで設置したものだ」
「長旅になりそう、というわけですか」
「長旅という言葉で済めばいいな」

改は何かを悩むかのように手を組む。まるで今までの人生とこれからの旅を天秤にかけるかのように。

「何か悩んでいるのか?」
「これからどうなるんだろうくらいは考えても良いと思うんですけど」
「忠告しておくが、この世界に対し理解を示した以上、既に君はこちら側だ。これだけは強く言っておく。戻ることはできない」

ただ彼はポカンとした後、こう告げた。

「それは大丈夫です。ただ今より金にゆとり出るかなあとは」


人事評価 デッカー→アオEmailで改の異質さを報告

結果と理由の逆転をおそれないで進め

会社の人間以外と飯屋に入ること自体が3年振りである男とその男を人のいないステーキハウスに呼び出した女。

負号部隊の遺産の通信施設復旧作業


文字数: 3243

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