保安施設ファイル: エリア-58
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「施設暫定ファイル: エリア-58」

58の情報統制部門は、社会的な混乱の時代を革命軍に引き起こさせ、その後に強化された情報網を展開することで資産を集中し、OSおよび代理AIの軍拡を図った。

「Intermission: Decathexis」

Phenom-Λの発生から数か月が経ち、トライアド・ファウンデーションは外宇宙文明との協定に基づく復興支援を得ることに成功していた。同時期に、管理部門はトライアド全体の支配体制の在り方に悩んでおり、人間による不安定な管理体制が、この組織全体を腐敗させる可能性を危惧していた。

ビル・ムーア 58管理官は、管理部門の総合的な依頼を達成するため、エリア-58そのものを実験体とした大掛かりなプロジェクトを実行する。プロジェクト・デッドリンガーは、エリア-58 再現研究施設X-01/aと死後意識群を接続する試みであり、人的資源の有限性に影響されない不滅の組織を構築するというアプローチから発生した。

プロジェクトは、死んだ人間の生前の行動を記録し、その再現の延長線上に存在する「延命時の姿」をシミュレーションすることで完成する。誕生したシミュレーション済み個体は、生命倫理的観点から支障の無いように定期的に記憶処理され、死後の24時間程度でループを続ける。しかし、死んだ人間の意識というものが一概にシミュレーション可能であるわけでは無い。そのようなシミュレーションには大規模な処理能力を必要とするため、これを代替的に実行可能とする本人の脳機能が必要である。

エリア-58でプロジェクトの試みが加速すると、こうした関係者はできる限り状態の良い脳を回収するため、少しでも早く脳を摘出したいと考えるようになった。この結果、本来の (純粋な) 人間の意識が不必要な摘出手術によって腐敗、「殺害」されてしまい、本質的な「死」が訪れた、空っぽの脳が形成されてしまう。

空洞化した脳は、他の一部の水槽脳と同時にSUB-Ψに接続される。SUB-Ψで発生したシミュレーション世界は現実の諸領域に到達可能となり、徐々に現実のデジタルインフラに浸透していく。

空洞化した脳の群体は、SUB-Ψをコントロールするプログラムによって同様に「死んだ自分自身」を再現するように要求される。しかし、人間意識の本質は「脳の電気的活性」そのものの連続性であるため、一度脳死状態に陥った個体は、死んだ自分自身を再現することができない。

こういった空洞化個体は、後にPhenom-Σと呼ばれる敵対的エンティティへと変貌する。Phenom-Σ集合の主人格は自身がゾンビ的でないことを主張するため、自身が真の意識でないと言及する他の全ての現実構成要素に対して、普遍的に敵対的になる。

施設概要:

エリア-58は、大規模なデジタルシミュレーションの実行により仮想的に無限の空間を確保している。それぞれの人員はデバイスを通じて自由にエリア-58の仮想ディープウェルにアクセス可能であり、定期的なシステムのダウンタイムを除いて、自由に滞在することができる。

標準的なタイムラインより先進的であるため、エリア-58には、2040年の時点で他の次元時間軸と異なるアノマリーを収容している。そのほとんどは有機的な意識を持つと推測されるアノマリーであり、これをシミュレーション世界へ投獄することで、安定した収容を実現している。職務に従事するほとんどの職員の安全を保障するため、人的資源の異常な強化が容認されている。これはプロジェクト・デッドリンガーと呼ばれる機密計画の一部である。

2040年後期、エリア-58・仮想ディープウェルに出現した (意識の兆候を示す) Phenom-Σが暴走し、自らを現実の存在であると認めない現実の構成要素に対して不可逆的に敵対的になる。Phenom-Σは、脳機能の蘇生によって偶発的に誕生した自我存在であり、これの情報網へのアップロードによって、Phenom-Σは実質的に不死の意識存在となる。

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