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(サイモン・グラス博士、サイト-17・主席心理学者)
セッションY521の記録を開始します。記録上の文脈として……私はサイモン・グラス。-17の心理学者です。本件、インシデント-Y521以下の第六項違反行為の主要容疑者として拘束中である、カシアン・ピカロ博士の精神鑑定を行っています。
ピカロ博士。事件当時の、その精神状態の法的評価を鑑定すべく私はここにいます。心身耗弱者の行為は如何なる理由によっても罰せられません。私はあなたの処罰を判断する立場ではありませんが、常に中立です。結論は出しません。なので、可能な限り事実に即して、妥当な説明をしてください。
あなた自身について軽く話をしていただけますか?自己紹介としておきましょう。
(カシアン・ピカロ博士、ゾーン・ヴェスター・参照部門 研究者)
カシアン・ピカロ。ゾーン・ヴェスターの職員だ。君がなんやかんや話を進める前に先に述べておこう。私は財団が述べる規定と行動原則に基づいて、かつそれを順守していた。君らが言わんとするところは把握している。説明するのに十分な材料になるだろう。
すみませんが、事件当時の詳細についてお聞かせいただければ幸いです。
知ってるだろ。ヴェスターで管理中のアノマリーが収容違反を引き起こした。私の監督ミスだ。その件については……あまり話したくない。
オーケイ。では、最初からやり直しましょうか。ピカロ博士、鑑定はそもそも何のために行われるものだと思っていますか?
医学的見地から、行動制御能力を評価するためだ。
50%正解です。刑事責任能力はそれ単体で評価されることはありません。「善悪の判断能力」についてご存じですか?
心理学者じゃないのでね。そこまでは分からん。
これを専門的には弁別能力と呼びます。モラルの話ではありません。刑法においては、自身の行為が結果的にどういった利害得失を発生させるのか……つまり、法と秩序に照合し、それが許されるのか否かという物理的事実を理解できることを指します。弁別能力と制御能力の著しい減退に基づいて、初めて心神喪失と見做されるのです。
実際に聞いてみましょうか……まず、あなたは神を信じ、その存在を崇拝しますか?
[数秒間の沈黙。]
聖ユダよ。主の忠実なるしもべにして友よ。この困難極まる地における守護聖人として……あなたを崇め、呼び求め奉る。
ユダ・タダイへの祈り。頼る術がないと仰るのですか?
そういう訳でもない。慣例に倣っただけだ。つまり、あー。先程の質問に対する回答としては、そうだ。
あなたは神や聖人が赦すのであれば、殺人は咎められないと考えますか?
ノーだ。
突発的な怒りや暴力性に悩まされることは?
あまりない。
あなたに与えられているのは二択です。「イエス」か「ノー」か。
…イエス。
詳しく聞かせていただきたいですね。対人理解に困難があると思ったことは?
ある。それも何度も。相手が思っているほど深刻ではない事態に悩まされたり、それが原因で他人に避けられていると感じる。
責任能力の低下を感じたことは?
業務上何度か経験したし、そう思った。事件当時の制御能力に関しても……問題があったかもしれない。
分かりました。細かい部分は後で聞くとしましょう。ここからの質問はデリケートな部分を扱います。ご気分を害されるかもしれませんが —
[数秒間の沈黙。]
分かってる。…分かってるよ。
ピカロ博士。あなたは2005年4月26日、ゾーン・ヴェスターの有機物研究収容チャンバー33/xで発生した収容違反に関する、犯罪的過失の疑いがかけられています。当時のプロジェクト監督者としてのあなたの行動について、行動証拠に矛盾する内容があるとお考えですか?
…いいや。
では、あなたは[データ不透明]の収容違反について違法性を理解しており —
— 待ってくれ、何だって?
— 同時に、[データ抹消]の殉職についても自身の違法性理解を認めるのですか?
今、何と言った?私にはよく聞こえなかった。
何か異存があるのであれば正確に —
— 聞こえないと言っているんだ!
聞こえるはずですよね。こんなにも近くで喋っているのですよ。
君 - お前は何について話しているんだ?
最後の質問です。違法性理解から目を背けるために、意図的に忘却した情報がありませんか?
黙れ、お前は - 私の責任能力を問うための存在だろう!
私を鑑定医として選んだ理由についてなら、もう思い出せるのではないですか?
お前はグラス博士ではない。ここもゾーン・ヴェスターではない。それについて口にするな!発言するな、記録するな!
物理的にそうではないとしても、あなたの頭は私をグラス博士として視ています。あなたはゾーン・ヴェスターの、参照部門に在籍していた。そこではある種の特別な……特別な類の実験を執り行っていたでしょう。
質問にお答えいただけますか?
「ノー」だ、偽善者!「ノー」、「ノー」、「ノー」!私をここから出せ!
ここが何処なのかを理解しているのなら順調です。
浮上させろ!
それは不可能です。ここから声は届きません。お分かりでしょう。
このクソ —
— 論理層は完全に回復しました。あなたの内神経叢が完全に活性化しているんだと思います。いい調子ですね。
頼むから、忘れたままにしてくれ。
あなたは参照部門でプロジェクトを監督し、それが失敗したと思い込んでいる。しかし実際にはそうではない。あなたに託された作戦は、対象のアノマリーを収容することです。もう一度、この頭の中にはっきりと叩き込んでやりましょう。
あなたは1体のアノマリーについてご存じのはずです。
なぜお前はそれを発言できる?なぜ記録できている?
[データ抹消]については、お悔やみを。しかし申し訳ありませんが、ピカロ博士。最後の質問です。
あなたはSCP-2521について、理解していますか?
[グラス博士]が抹消される。
[登録抹消済]
INIMICAL / PAYLOAD
5/AMIDA
2/CAUTION
特別定義:
特別収容プロトコル:
ゾーン・ヴェスター、眺望 (論理層内)。
説明:
精神鑑定ログ: Y521-A-I/2005
セッションY521は、保安部門による犯罪の摘発・捜査手続き後、通例行われる刑事責任能力の追及のため開始されました。本件は、2005年のインシデント-Y521-[機密]における第VI項違反行為の容疑者、カシアン・ピカロ博士を対象としたセッションです。インシデント当時の責任能力および耗弱該当性を評価すべく、実施されました。
プロジェクト: カタラクトの専権により、本セッションの記録が同プロジェクトの管理部門に対して共有されています。
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