これは何?
天津神による日本の支配・加護の維持を試みる財団と信仰転覆を試みる国津神、そして維持計画の要となる日本各地の神格防衛サイト群と職員、さらに個人フリーランス達の様相を描く連作です。
そんでもってこれは資料集。
設定
メモ: 遥か昔、日本国土に湧いた国津神から、天界に住まう天津神へ日本国土の統治権が移譲された、日本の宗教体系の大きな転換点である。今や国津神は地方のごく一部にのみ勢力を誇っているが、つまり火種は消えてはいないということだ。日本は八百万の神がいるとはよく言ったもので、こんな近世にも日本各自でしょぼい神格は湧く。日本は未だ休戦中である。
天津神は天皇の祖とされる天照大神をはじめとする派閥であり、日本人の信仰心は、天皇を象徴とすることで天津神に捧げられている。国津神信仰による信仰の転覆・逆転が起こり、SCP-1111-JPの効力が失われ、日本という国が現実性低下を引き起こし魑魅魍魎の跋扈することのないよう、財団は国津神の再興を阻止することにした。
その国津神信仰の拠点諏訪国に設立されたのが、国津神信仰の忘却を目的としたサイト-8171。日本各地に神格研究サイトは存在するが、諏訪は国津神最強格の神格存在“タケミナカタノカミ”を諏訪大明神として祀り、国内最大の国津神信仰区域となっている長野が最重要拠点である。
天津神と国津神の関係性、財団の方針、ヴェールの内側には属すが何処にも所属していないフリーランス、熊野の謎の構造物、新興カルト……数多の思惑が入り乱れ、絡まり、事態は徐々に悪化の一途を辿る。
平成。一度出雲国譲りにより信仰が転換して1900年。現代日本で繰り返す信仰をめぐる群像劇を描く連作。
穴蔵フリーランス
夢川初
祖父母への学費返済と高校卒業後の自立金のために、実入りのいい穴蔵フリーランスとして日々依頼を受け業務をこなす中3。穴蔵フリーランス所属は中1。以前は現田さきと共に霊媒系のバイトで小遣いを稼いでいた。理論派思考のため、物事の辻褄合わせから答えに辿り着くことが多い。
同僚の現田さきとは小中ともに同じ。もっぱらサキのブレーキ係。
色を抜いた白髪に、赤のリボンカチューシャを着けている。
現田さき
学費と生活費のため、夢川初と共に、実入りのいい穴蔵フリーランス入りする。以前は夢川初と共に霊媒系のバイトで小遣いを稼いでいた。
一見すると好奇心のままに動いて見えるが一応考えて動いている、はずである。夢川が理論派ならサキは勘。
明るめの黒髪を、低く左右で結ったおさげ髪が腰まで垂れている。八重歯。どんぐりまなこ。
斡旋業者
穴蔵フリーランス組合所属の斡旋業者。夢川と現田の担当。関西弁の自我が強い。
無所属フリーランス
東国斎
夢川や源田と同じ中高一貫校に通う無所属フリーランス。熊野で3年前に拾った怪異である丸山結とともに依頼を消化しているため、多方面の依頼に対応できる。夢川と現田に穴蔵フリーランスを紹介した。
長めの黒髪。黒縁メガネ。常に質素なネックレスを一つ着けている。口調は粗雑だが、面倒見はいい。
丸山結
東国斎が熊野で拾った怪異。そこそこ強いらしいが、高神格の地に行くと現実性にあてられて萎びる。姿を隠したりできるが、霊感を持つタイプには何かいることはバレる。霊感強めの穴蔵組に初対面でバレたため、フリーランス業に引き込んだ。
上下白で白紋付きの袴を履いた和服姿。長い髪を左で結いまとめている。基本揶揄うような笑みを浮かべている。
廃サイト - 81██
鈴木橙
廃サイト-81██の元職員。神格(正体は熊野那智大社の御祭神であった丸山結)の出現を目の当たりにし、サイト-81██を封鎖し神格の記述を処分することで事態の鎮圧に成功した。不用意な信仰心はなくすべきと考えていたが、忘れられて後世に繋げられていないことを痛感し、サイト丸ごとの消却姿勢には懐疑的になった。くっそブラコン/シスコン。
熊野山中に存在する破壊された廃施設の地下二階で気を失っているところを、現田さきにより発見・保護された。
エピソード記憶欠落型の逆行性健忘を患っており、以前の記憶は不明。
詳細不明のメールに名前が出てくる。
++* 鈴木波
財団サイト-阿・吽
羽倉栄
サイト-8171-阿の職員。サイト-阿・吽合同で神格の保護、調査、研究を行う。本業よりも、研究室の片隅にある培養器で育てている酵母の方に関心を割いている。
髪色は脱色して薄黄色。赤縁の度入り遮光グラスを頭に引っ掛けている。仕事時は大抵、くしゃくしゃの白衣を羽織っている。
高辻祐
サイト-8171-吽の職員。サイト-阿・吽合同で神格の保護、調査、研究を行う。本業に真面目であり、ワーホリ気味。
身だしなみには気を遣っており、スーツの上から白衣が正装。
あ行
穴蔵フリーランス
関西、中部圏のフリーランスが多数在籍。夢川初と現田さきの女子中学生フリーランス組は、余剰次元都市の穴蔵ではなく、一般社会に居を構えながら斡旋業者を介して依頼を受注している。
フリーランスは色々な区分があるが、フリーランスの人間は自らをフリーランスと呼称しないことが殆どであり、夢川と現田も“煤払い”と自称している。
天津神
高天原に座す神々の総称。一般的に鳥類の見た目であったりと、空を飛べる存在であることが多い。
現在の日本の信仰神格はほとんどが天津神系であり、現在も徐々に、神社の国津神系神格が天津神系神格に置換されつつある。
天照大神
高天原の主祭神。高天原の最上位に属する神格存在。
日本神話は最高神と名乗りつつも、その最高神もさらに上の何かを祀るという行為を行う記述から、天地開闢てんちかいびゃくの時に発生した造化三神を祭る巫女という話もある。
出雲国譲りにより国津神から葦原中国の統治権を獲得したのち、天照大神の孫である瓊瓊杵尊ニニギノミコトが天孫降臨し、以降子孫である歴代天皇が葦原中国を治めるようになったとされる話が、天皇の祖を天照大神とする根拠である。
出雲国譲り
読んで字の如く。国譲り、統治実権の変遷イベントの名称である。このイベントをもって、葦原中国の実権は国津神から天津神へ移った。
葦原中国平定あしはらのなかつくにへいていともいう。
国譲り - 概要
1. 高天原の主宰神である天照大神は「葦原中国は私の子、正勝吾勝勝速日天忍穂耳命まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみが治めるべき国である」として天下りを命じるが、「葦原中国は大変騒がしく、手に負えない」として平定のための降臨を拒否。
2. 1を鑑みて、葦原中国を統べる大国主神オオクニヌシノカミの元へ交渉に行くよう他の神々を派遣するが、あるものは家来に、あるものは行方しれずとなる。
3. 建御雷神タケミカズチノカミ、天鳥船神アメノトリフネノカミを葦原中国に遣わす。
4. 大国主神オオクニヌシノカミへ国譲りを迫れば、大国主神オオクニヌシノカミは息子2人に聞きなさいと遅延交渉。八重事代主神やえことしろぬしは承諾しお隠れに、建御名方神タケミナカタノカミは建御雷神タケミカズチノカミと対決し、結果として諏訪まで敗走。“諏訪の地を出ない”という条件のもと、和解。
5. これにより大国主神オオクニヌシノカミ、統治権を移譲。
大国主神オオクニヌシノカミ
葦原中国を取りまとめる国津神系の最上位神格。出雲国譲りで天津神系に統治実権を開け渡し、表舞台を退く。
出雲国譲り神話に出てくる八重事代主神やえことしろぬしと建御名方神タケミナカタノカミは直系の息子である。
か行
神世継かみよつぎ
『国津神から天津神への信仰対象の変化』イベントの財団用語。かつては2世紀ごろの出雲国譲りが該当する。
国津神
日本神話に登場する神の分類。天津神と国津神に分けられ、これは神が発生した場所による。
天津神は高天原におわす神々、そこから天降った神々のこと。
国津神は葦原中国(地表)に現れた神々のこと。
国津神は多くが龍神、蛇神とされ、そのような見た目であるとされる。出雲系国津神(国津神の本流)は龍神である。
2世紀ごろ、出雲国譲りとして有名なイベントにより、元々葦原中国を治めていた神々。
さ行
信仰消却
サイト-8171-む や 廃サイト-81██などの一部信仰監視・研究サイトが保有する正常性維持のための最終防護措置。
・サイト周辺の特定信仰エリアごと、人類の認知外に排出
・特定の信仰を記憶処理
等の手段が取られ、『神世継発生の結果として、SCP-1111-JPの効力喪失する』ような事態が発生しないようにする。
神格の突発的な顕現に対処不能と判断された場合も実行される。
た行
建御名方神タケミナカタノカミ
大国主神オオクニヌシノカミの息子。出雲国譲りで高天原から降臨した建御雷神タケミカズチノカミと対決して敗走。諏訪に入って降伏し、以降諏訪から出ないことを条件に和解。
元々諏訪では蛇神御石神ミシャグジが諏訪の神として信仰されていたが、入諏訪した龍神建御名方神タケミナカタノカミが諏訪明神として信仰されるようになり、御石神ミシャグジは吸収、同化される形で消滅。
諏訪は国津神系神格信仰が最大級の地域になった。
鹿島神宮の要石で建御名方神タケミナカタノカミが頭を抑えているとされる。
高天原たかまがはら / たかあまのはら
天津神系神格が座す地。読みとしては高天原たかあまのはらが正しいが、現代読みでは高天原たかまがはらが一般となっている。
『古事記』などでは、葦原中国は地上。根の国・黄泉は地下。高天原は天上にあるとされ、天照大神もここに座すとされる。
な行
は行
ま行
無所属フリーランス
多方面から多岐にわたる依頼を受領し、遂行する。後ろ盾が存在しないため交渉力がものをいうが、実力主義であるために一度パイプが繋がれば穴蔵以上に稼ぎが出ることもある。現実改変者の自称傭兵や財団の協力者なども確認されている。
ロシア支部の要注意団体“左利き”はこれに該当。
神世継の東国斎はこれ。
や行
ら行
わ行