アイテム番号: SCP-4000-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-4000-JPの収容はその性質上困難であるとされています。SCP-4000-JPの対象にあたる人物は記憶処理の後に解放されます。
SCP-4000-JPに関する情報の収集を目的として、財団ウェブクローラ(JiU)が運用されています。該当ウェブクローラはインターネット上の情報を監査し、SCP-4000-JPに関する情報の記録と削除を行います。
SCP-4000-JPに関する情報はサイト-81A1のデータアーカイブに記録されます。情報は4/4000-JP機密に指定されます。
説明: SCP-4000-JPは曇天時に発生する感覚刺激、及びそれに付随して発生する異常な知覚現象です。SCP-4000-JPの発生件数は年間で15件であり、発生には特定の条件や法則が存在するものとされています。
SCP-4000-JPが発生した場合、対象は降雨現象の開始を予感します。この予感は基本的に的中し、SCP-4000-JPの発生から15分以内に短期的な降雨現象1が発生します。これは非異常性のものであり、雨滴にも異常な点は存在していません。
降雨現象の予感後、対象は「肌に雨滴が当たった」という感覚を覚えます。しかしながら、実際には雨滴は対象に当たっておらず、この時点では降雨現象も発生していません。この現象が如何にして発生しているのかは不明です。現在も調査が行われていますが、サンプル数の少なさから機序の解明には至っていません。
上述の感覚刺激を発生に伴い、対象は降雨現象の開始を確認するために上方を向きます。この際、対象は「空を浮遊するアメフラシ(Anaspidea)様の実体(SCP-4000-JP-1に指定)を視認した」という旨の報告を行います。ですが、現在までにSCP-4000-JP-1に指定される実体を第三者が視認・観測した例は存在しておらず、財団による各種観測装置を用いた撮影や記録の試みも全て失敗に終わっています。現時点において、収容担当チームはSCP-4000-JP-1の実存を疑っています。
補遺4000-JP.1: 対象へのインタビュー
2025/10/13、SCP-4000-JPの対象へのインタビューが実施されました。
以下はインタビュー記録の一部抜粋です。
インタビューログ
対象: 須藤裕也氏(須藤氏と表記)
インタビュアー: 雨下博士
付記: 当該インタビューはSCP-4000-JPに関する調査を目的として実施、記録されたものです。
<抜粋開始>
雨下博士: では須藤さん。当時の状況について教えていただけないでしょうか。
須藤氏: わかりました。
記録上の沈黙。
須藤氏: 当時は帰宅中でした。大学の講義も終わって、特に予定もなかったし帰るか〜って思って。どこかに寄ったりもせず、ただ家に帰ることだけを考えていました。帰ったら課題しないとな、とか考えてました。
雨下博士: その時、何か変わったこととかはありませんでしたか?
須藤氏: いえ、特には。ああでも、空はすごく曇ってました。いかにも雨が降りそうだなって感じの天気でした。傘持ってきてないし早く帰らないとな〜って思いましたね。ちょっとだけげんなりしてました。
雨下博士: なるほど。
須藤氏: 雨は嫌いじゃないんですけど、急に降られるとやっぱり困るじゃないですか。傘持ってないと濡れるし、洗濯物とか外に干してたら取り込まないといけなくなるし。どちらかといえば雨は好きなんです。気持ちも落ち着くし、それに魅力的だから。でも降るタイミングは考えて貰いたいよな〜って思いますよね。
雨下博士: わかります。雨は魅力的ですけど、降るタイミングによってはとても困りますからね。
須藤氏: そうなんですよね。だからちょっとだけ早足で歩くようにしました。走るほどでもないけど、それでも気持ち速めって感じで。
雨下博士: 続けてください。
須藤氏: そうしていたら、肌に雨粒が当たった感覚があったんです。
雨下博士: 雨が降り始めたわけですね。
須藤氏: いやそうじゃないんです。よくあるじゃないですか、雨が降ってないのに雨粒が当たったって勘違いしちゃうやつ。
雨下博士: ありますね。
須藤氏: まあ今回もそうだと思うんです。でもやっぱり気になるじゃないですか。もし本当に雨が降ってきたらやばいですし。だから、空を見上げたんです。そしたら、あれが空を覆っていました。
雨下博士: あれ、とは?
須藤氏: 俺にもよくわかりません。でもぐずぐずに溶けきったナメクジ、いやウミウシみたいな、とても大きな何かがいたんです。表面には粘液みたいなものが纏わりついていて、ねたねたとテカっていました。なんだあれ、ってなって、思わず呆気に取られて。
雨下博士: その存在がどんな様子だったか、教えていただけますか。
須藤氏: えっと、僅かに震えながら、その場に佇んでいました。その後、急に身体を捩らせて。そうしたら、まるで雑巾を絞ったみたいにあれの身体から雨粒が落ちてきたんです。ざーっと降る感じで、勢いはそこそこありました。そこで初めて雨が降っていることに気付いて、俺は急いで家に帰りました。
雨下博士: ありがとうございます。雨粒について、何か普段と変わったようなことはありませんでしたか?
須藤氏: 無かったと思います。でも俺は、あの時降ったものが雨粒だったとは思えないんです。あれの体液、ぬとっとした汁が希釈されたものが降り注いだんじゃないかって思っちゃうんです。だって俺は、実際にあれから雨粒が落ちてきているのを見ているから。
雨下博士: お話を聞く限り、そう思ってしまうのも納得できます。
須藤氏: いやまあ、頭の中では違うって分かってるんです。でもなんか、感覚的にそう思っちゃうというか。
雨下博士: なるほど。ところで、他に何か分かることなどはないでしょうか。
須藤氏: 他、ですか。そうですね。
須藤氏が逡巡する素振りを見せる。
須藤氏: なんというか、嫌な気持ちになりましたね。
雨下博士: 嫌な気持ちですか。
須藤氏: はい。自分の中の雨のイメージが破壊されたような気がするんです。
雨下博士: 詳しく聞かせてください。
須藤氏: さっきも言った通り、俺にとっての雨は落ち着くものなんです。儚い雰囲気があって、物静かで、あの薄暗い空の色も好きでした。雨粒の滴る音も聞いていて気持ちいいので好きだったんです。
雨下博士: はい。
須藤氏: だけど、俺は見てしまったんです。あれが身体を捩り、雨粒を落とす姿を。それからはもう、雨が降る度にあれのことを思い出してしまって、この雨粒もあれの身体から落ちてきてるんじゃないかと思うと本当に気持ち悪くて。あれが思考の片隅に出現するせいで、雨が降っても落ち着かなくなったんです。もう、魅力的とも思えません。雨粒はあれの体液で、雰囲気も空の色も全部あれが作り出したもので。なんというか、それがとても嫌だなあって。
雨下博士: その存在のことを思い出してしまうから嫌、というわけですね。
須藤氏: はい。結局その日はびちょ濡れになっちゃったし、雨のイメージもおかしくなっちゃったし。本当、とんだ災難ですよ。
<抜粋終了>
終了報告: 須藤氏は記憶処理を施した上で解放されました。
後の調査により、須藤氏の自宅周辺で局所的な降雨現象が発生していた記録が確認されました。降雨現象は1時間ほどで終息したことが明らかになっています。また、降雨現象の発生日が須藤氏がSCP-4000-JPを体験した日と同じであったことは特筆に値します。
SCP-4000-JP及びSCP-4000-JP-1に関する有益な情報は得られておらず、依然としてこれらの異常に関する情報は欠如したままです。
須藤氏が自宅から撮影した雨空
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